『観光社会学のアクチュアリティ』というタイトル。
『観光社会学のアクチュアリティ』という本を
11月に出版しましたが、
このタイトルで用いている
「アクチュアリティ」という言葉には
少し思い入れがあります。
- 作者: 遠藤英樹,堀野正人
- 出版社/メーカー: 晃洋書房
- 発売日: 2010/11/01
- メディア: 単行本
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ここで用いている「アクチュアリティ」とは、
通常言われるような意味での
「現実」とか「実際」という
意味ではありません。
そうではなく、ヴァルター・ベンヤミンが
言うような意味に近いと思います。
三島憲一さんの『ベンヤミン』(p.12)の表現を用いるなら、
歴史がひとつの焦点に凝集しているある特定の状態
臨界点に達したプラズマ状態
どの瞬間にも無数の群れとなって天使が作られ、
神の前で讃歌を歌ったかと思うと、
歌をやめ無のうちに消えて行く(ような状態)
なのです。
- 作者: 三島憲一
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/01/12
- メディア: 文庫
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つまり社会のむちゃくちゃとんがった
先端的な部分があるところ(観光という現象)に
凝集して現れたかと思うと、
次の瞬間には消え去っていくような状態を
私は「アクチュアリティ」という用語に託しています。
私なりの表現を使うなら、
冬の海の砂浜に枯れ枝で大きく描いた、
これまで見たことのないような
比類なく感動的で美しい絵であり、
それは次の瞬間には波にさらわれ
消え去る運命にあるもの
それこそが「アクチュアリティ」なのです。
観光社会学は、
まだこれまで見てこなかったような
移動の中の社会という
社会のとんがった部分を
感動的に描きだすものであり、
でも、それは移動という儚いものを
扱っているがゆえに、
ずっと永続的に存在するのではなく、
生成し続けなくてはならない運命にあるもの
ではないかという、そんな思いを託しているのが、
このタイトルなのです。
1月の出版記念シンポジウムでは、
こんなことも言おうっと。