「役に立つ」のいくつかの位相。

学問、たとえば観光研究が
実践に「役に立つ」ということを言うときには、
「役に立つ」のいくつかの位相を区別するべきではないでしょうか。


1)実践への応用可能性
何か政策を立案し実施していったり、
産業として企画を展開していくことに、
即座に応用できるというという位相。


2)実践の概念枠組提供可能性
産業や政策において
観光の実践的な取組を
うまく整理できるような
概念枠組を提供できるという位相。


3)実践の自省的能力の促進可能性
理論と実践の緊張関係の中で、
実践の存立根拠そのものに疑問を提示し、
自省的能力をもたらすという位相。
人によっては、これを「理論のための理論」とおっしゃる方もいますが、
実践が成立している社会的プラットフォームそのものを問い、突き詰めていくという、
この位相の重要性は非常に大きいと思います。


4)メタレベルの批判性
そもそも「役に立つ」に関連する
問いに収れんする学問のあり方を
批判的に考察するという位相。


ざっと考えただけでも、
これらの位相がありますが、
これらのどこを思い浮かべながら、
観光研究が「役に立つ」ということを言っているのか。


今後これをしっかりとしておく必要があるように思うのです。


一人の観光研究者の中でも、
これらのすべてを考えに入れていく必要があると思います
(ただ得意、不得意はあると思いますが)。


でも、どの位相で議論の対話を展開しようとしているのかは、
明瞭にしておくべきでしょう。
それが、議論の対話を、一層、
促していくことにもなるのではないでしょうか。